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第27話 ここにいて欲しい

Penulis: 酔夫人
last update Tanggal publikasi: 2026-07-17 11:39:40

夕方。

樹を乗せた黒塗りの車が静かに屋敷へ滑り込んだ。

「お帰りなさいませ」

使用人たちが一斉に頭を下げる。

「ああ」

短く応じた樹は、そのまま屋敷へ入る。

「小春は?」

「お部屋にいらっしゃいます」

橘が答えた。

「今日は一日、お部屋でお過ごしでした」

「体調は」

「問題ございません。ただ……」

橘は少しだけ言葉を選んだ。

「少し気になることがございます」

樹は歩みを止める。

「何だ」

「小春様がお仕事をお探しになろうとしています」

樹の表情は変わらなかった。

しかし、その場の空気だけがわずかに張り詰める。

「お部屋で求人サイトをずっとご覧になっていたようです」

「そうか」

静かな返事だった。

樹はしばらく黙っていた。

「止めなかったのか」

「止めることはできました」

橘は正直に答える。

「ですが、小春様にとって働くことは、ご自分の居場所を作ることなのだと感じたのでお止めしませんでした」

「……なるほどな」

樹は小さく息を吐く。

朝比奈家で身についたことなのだろう。

あの家では、小春は役に立たなければ存在を認められなかったに違いない。

だから小春は、ここでも働かなければ捨てられると
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